・樹羅の囁き・

 胸のなかに星がない夜…。
 
 孤独の手が私の心をなでる…。

 青い波が何もかもさらっていく…。

 砂の心がさらわれていく…。

 無音の水平線の彼方から、樹羅の囁きが聞こえる。
 『耳を澄まして…』

 私は、私の心を手放して、闇の空を飛び立つ…。

 青い波の涙を越えて…。

 引き裂こうと吹きすさぶ風を越えて、行く先を閉ざす雲を越えて…。

 見えてくる…。
 『音の森』が…。
 繰り返し奏でられる音の言葉…。

 樹羅は囁く。
 『耳を澄まして…』

 聞こえてくる…。
 たくさんの、言葉達…。
 優しくも力強い言葉が音を作り…音は言葉をのせて風となる…。
 
 心を包みこんで子守歌のように繰り返し、聞こえる…。
 手のひらからこぼれていた言葉が、風となって“私”の目を覚ます…。

 『ほら…、もう寂しくない』
 
 私のなかの私が唄う…。
 その手から、…星たちが空へと還っていった。

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